第8章 魂の雪蛍
狂おしいほどに愛おしい この穏やかな一時は
大きな嵐の前夜だとしても
流れ行く時に、君の移ろいゆく全てを
傍にいてずっと見ていたい。
そして、いかなる時も君の事を守ってきた
君にとって大きな存在であったろうあの太陽のように俺もなれたらと思う。
どんな変化も待ち受ける戦いも覚悟はしているし進まなければならない。
だけど、この花火と命の蛍火の下に桜華と二人。
幸せな甘い匂いに満たされているこの瞬間の俺たちを
穏やかな風景の一部としてとして絵画の中に閉じ込めてしまいたい……。
もう一度強く抱き締める。
桜華もそれに応えるように俺の背に腕を回した。
暑さなんて関係ない。
「桜華……。」
名前を呼ぶことは特別なことだ。
だから呼ぶことも呼ばれることも
愛した人とならどんなに幸福か……。
俺の腕の中から、潤んだ目で見上げる。
身体の中心から愛が熱を強くする。
好きでしょうがない。
薄く開いた柔らかく色づいた唇が欲しくて
また口づける。
薄く開く目蓋の中に、俺を写す瞳が
以前と比べると赤みを帯びている。
桜華が"お揃い"と言って喜んでいたが
またそれが出来たことが嬉しい。
安心しきって全てを委ねるように
甘えるように応える口づけが
情欲の火を強くする。
溢れだす気持ちが抑えられない。
抑えたくない。
まだ足りない。
人間に戻ったこの身体で
桜華の全てを愛したい。
唇が離れると、吐息と視線が熱を孕んで絡み合う。
「ずっと離さない。何が起きても、俺が守る。傍にいる。」
この愛おしい瞬間に
人間に戻れたこの身体で
もっと
その心と体、瞳の奥に俺を焼き付けたい。
「……もっと桜華が欲しい。」
頭のいい君は目を見開いた後
恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めて頷いた。