第8章 魂の雪蛍
俺より少しだけ小さな体が、腕の中ではもっと小さく愛らしいように思えた。
大きな奇跡なこの瞬間
まだ花火が轟音をたてて空に花を咲かせる
人間だったあの頃、恋雪と同じような会話をした。
今と同じ花火の上がる夏空の下で。
恋雪が死んで鬼になって記憶を失い、200年以上鬼として生きてきた。
無意味な殺戮を繰り返し、恋雪に約束した”強さ”だけを無意識に追い求めて......
長い年月だった。
そんな俺が1年前桜華に出会い、あの頃のように世話を焼く間に恋に落ちた。
ふつうの人には短い時の中で目まぐるしく いろんな事があった。
恐らくまだ君の事、知らないことの方が多いだろう。
桜華は恋雪の存在を知り、泡沫の夢のようだったあの頃の幸せへ、俺が消えてしまう不安を抱えていたようだ。
あの頃の俺はもういないし
あのときの大切だった人ももうとっくの昔にいなくなった。
俺は"今""ここに""この場所で"生きている。
与えられた幸せに自分が見合わないとも思わなければ慢心も疑心もない。
真っ当に生きられるのかもしれないと思っていたあの時と違う。
彼女のために真っ当に生きなければならないし、そうありたいと強く思っている。
『自分を見つめ、己の信じた道を貫き、自分や愛し信じる者と共に生きろ。』
そうだ。"人生をやり直せるかもしれない"じゃない。
ここまで導いてくれた大事な人のために
こんな俺でも愛して寄り添って共に苦難を歩む覚悟をしてくれる桜華のために
"やり直さなければならない"
それが出来ると"信じなければならない"
もう俺は………
間違えない。
手放さない。
与えられた全てに感謝して生きていく
心も身体も運命も全てが時を越えて繋がるから。
全ては選択の連続。
間違いがあっても、愛をもった強さを忘れなければ
遠回りしようが幸せに向かい進むことができる。
全ては、俺がこれから生涯背負っていく"日神楽"が生み出したものが教えてくれた。
生涯共に生きていくと誓う桜華が教えてくれた。