第8章 魂の雪蛍
全身が鼓膜から伝わった言葉で甘く痺れて、時も感じる風の感覚も音も、全てが止まってしまったよう。
溢れ出す涙が止められない。
それなのに、
「俺はまだまだ、桜華と共に強くなって共に同じ時を歩みたい。
一緒に助け合っていくのは、今までもこれからも桜華だけだ。」
あなたはどれくらい わたしを幸せにする言葉、喜ぶ言葉を知っているの?
わたしだって
「わたしも、同じ気持ちでございます。狛治と共に強くなって助け合って生きていきたい。
あなたじゃないとダメなんです。一緒に生きて欲しい...。
”日神楽 狛治”
わたしは、あなたの妻になります。
そして、日神楽家当主としてもっと心も剣技も強くなって、あなたを守ります。」
狛治はわたしの言葉を聞くと、噛みつくように口づけた。
とうとうあふれる感情で涙の止めかたも忘れて必死にそれに応えた。
全身に甘い電流が走っていく。
嬉しくて涙が止まらない。
これ以上の幸せって知らないの。
もし、あったとしても教えられるのはあなたがいい。
ふさふさした長い紅梅色の睫毛がうっとりするくらい美しい。
その奥で、優しい熱を滾らせる瞳が潤んで、からだの芯を燃やしていくかのよう。
唇が離れると、きつい程
その腕の中にわたしを納め込んだ。
「有難う。大事にする。」
そういいながらも、壊れるくらいに強く抱きしめるから、心臓ごと抱きしめられる感覚にまた、喜びで全身が震えて止まらないの。
あなたからは、もうたくさん愛も強さも貰ってる。これ以上がないほどに。
わたしを見つけてくれた時、まだあなたは鬼の心だったのに、体にも心にも傷一つ付けていないの、あなたは気づいていますか?
あの頃、確かに葛藤はあったのかもしれない。
だけど、ずっと一貫してわたしの事を大事にしてくれたの。
ふいに左手をとられて、薬指になにかが通り指を絡めてその上に口付けられる。
そこには少し大きめのダイヤの指輪が光り
リングには刀扇と同じ模様が施されている。
「日神楽家当主は華であれ。
桜華は思うように走れ。
俺は何があっても君の一番の味方で、伴走者だ……。」
「…はい。」
わたしは、この世界で一番の幸せな女です。