第8章 魂の雪蛍
『狛治さん
わたしたちのことを思い出してくれてありがとう。
元の狛治さんに戻ってくれて良かった…。』
『わたしたちが死んでもなお、"強くなります"って約束を無意識だったとしても覚えてくださって嬉しかった.....。
でも、もうわたしたちは充分です。』
「恋雪………俺は君に許されていいのか?
親父にも、師範にも…………」
恋雪は涙をいっぱい溜めながら笑顔で頷いた。
「ありがとう………。」
静かに穏やかな表情で
俺を見下ろしている。
恋雪は俺の言葉を待っている。
まだ、ここで生きていくか
恋雪と共に地獄へ逝くか………
恐らくこの暖かい空間は
そのどちらかを選べるような
生と死の狭間なのだろう
気づけば
俺の肩に
親父と師範の温もりがあった
彼らは、俺がもう一度
全うに生きて、己がたてた新しい志を貫くことを
心から願ってくれる人たちだ………。
そして……
その後ろには、同じ志を持ち、共に戦う最愛の女がいる。
俺は………
「俺は、もう一度人間として生きて、犯した罪の分、人を助けていきたい。
そして、大事な人たちと共に生きていく。
俺は、そっちには、逝かない。」
優しい眼差しを向けるその瞳を見据えて
俺の気持ちを述べると
満開の桜のような暖かい笑顔で恋雪は笑った。
『幸せになって……』
恋雪の言葉が脳の中でこだますると
視界が真っ白な光に包まれて雄治さんに斬られた場所から燃え尽きてしまいそうな強烈な熱が広がっていく
俺の中の残った無惨の血を焼き付くし浄化するように。
その熱さからの苦しさで身悶えてうずくまる。
『君は過去の呪縛を思い出し開放する事で完全な人間に戻ることが出来る。』
そうか……
俺は、人間として再びこの命で生きていくことを
この瞬間許されたんだ。
熱が引き、辺りが本来の明るさに戻った。
辺りを見回すと3人はもういない
俺を地獄から引き上げて
人の心を取り戻させてくれた
共に戦い寄り添うと決めた君が
涙でぐちゃぐちゃになって
俺を見ている。
言わなければならない