第8章 魂の雪蛍
『はい。俺は誰よりも強くなって
一生あなたを守ります。』
ドクンと胸が一気に締め付けられる感覚に
息が出来なくなった。
『誰かが井戸に毒を入れた………!!
慶蔵さんやお前とは直接やりあっても勝てないから、あいつら酷い真似を………!
惨たらしい………
あんまりだっ…!!
恋雪ちゃんまで殺された!!』
『お前さんがまた掴まったって聞いて、親父さんが首括って死んじまった!死んじまったよォ!!』
はっ…
体の震えが止まらない
変な汗が流れる
心臓の音が煩い
身体中がビリビリと痺れて割れそうだ。
そうだ……!
俺は………………
俺は…………………!!
「うあああああああ!!」
雪崩のように記憶の奥に閉じ込めた記憶が溢れだして
全身を焼き付くす痛みが、震えが止まらない。
俺は…………
昔、人間として生きてた頃の俺は
守る、助けるだの妄言ばかり吐き散らす
何も成し得なかった人生だった………。
それどころか
鬼になる前に沢山の人間を殺した。
師範の"守る拳"を血濡れにした。
親父にお前はやり直せるって信じてもらえたのに
師範にも、やり直す道筋を作ってもらったのに
俺は結局全てを裏切った
鬼になってから
馬鹿の一つ覚えのように
弱者弱者と疎んで蔑んできたけど……
一番呪い、蔑み、殺したかったのは………
約束も、遺言も、大事な人も守れない自分だったんだ。
「ごめん ごめん 守れなくてごめん! 大事な時傍にいなくてごめん 約束を 何一つ守れなかった…!!許してくれ 俺を許してくれ 頼む 許してくれ…!!」
気がついたら
無心にそう叫んでいた。
目の前に、見慣れた柄の着物の裾と
季節と今の気温に合わない風が
ほのかに懐かしい桜の香りを運んでくる
顔をあげると目の前には
恋雪が微笑みながら立っていた。