第8章 魂の雪蛍
「俺だから背負える宿命か.....。
俺は一人じゃない.....、そうだな。」
言われた言葉を噛み締めるように呟きながら、穏やかに川の流れ
を見守る。
「二人とも、もう供養経も済んだし、わたしたち、また夜の出店堪能してきますね!!
それではいい夜を♡」
明子の明るい声に振り向くと
少し離れたところで灯籠を見守っていた6人がこちらを向いて手を振っている。
「あぁ。そちらもな。」
片手を上げてかるく言葉を返す横で、桜華も袖を押さえて手を振った。
彼らが去り、村に集まった人も次は花火だと若い者を中心に川から離れていく。
すっかり暗くなった夜空は星雲が見えるほど澄んでいた。
街と違って人口の明かりが少なく、まだ明々と燈る灯籠と相まって幻想的な光景が広がっている。
「悟さんが、いい景色があって花火が一望できる場所教えてくれたんだ。
俺たちも行こうか.....。」
差し出された手と眼差し。
桜華は一抹の不安と予感を隠して笑顔でそれに応えた。
辺りは月の光がいきわたって明るく照らす。
耳元に物悲しいさを漂わせる晩夏の風が胸を締め付ける。
草木の葉を揺らす音に思わずつないだ手を手繰り寄せて腕を絡めた。
「どうした?」
「なんでもない.....。」
何か思いつめているようにも感じて、狛治は足を止めて顔を覗き見たものの、行きましょうという桜華が笑って見せたので、後で聞けばいいと思いなおしてその場を後にした。