第8章 魂の雪蛍
着付けや化粧を施して、居間に来てみれば、悟さんと、狛治がそこにいて、わたしの姿を見て柔らかく笑ってくださったの。
「狛治さん、お待たせしました!!」
二人がわたしの手を引いて狛治の前に立たせた。
「はい。あぁ、明子さん、美紀さん、有難うございます。
桜華…、おいで。」
誘われるがまま、狛治の目前に立つとふわりと結わえた髪を撫でて、優しい顔で見つめて遅れ髪を掬って弄ぶ。
「綺麗だ…。俺にはもったいないくらい。」
「これからはもっと着飾れ。着飾った今の顔を見ていたい。」
みんなが見ている傍でそんなことを言えてしまうのは、普段からそんな言葉をかけてくれる延長線。
だけど、恥ずかしいから二人きりの時に言って欲しい。
「そうでしょ?今の顔だってかわいらしいもの!!」
明子さんは両手を握りしめてそう言ってくださる。
御母様、御父様もわたし達にはいつも洋服や和服問わず、着せ替え人形みたいにいろいろ着せてくれた。
今更になって思い出す。
あの時もこんなに楽しかった。
今、また新しく家族と思ってくださいと言ってくださる皆さんとこうしている時間が幸せで守りたいものだと思う。
どういう適性でわたしに二つの痣が出来たのかわからない。
でも、御父様の血がわたしに大切なものを守る力を与えてくださったのなら、わたしはその力を惜しみなく使おう。
今度こそ、大切な”守りたいモノ”を守り抜くために。
「じゃぁ、行きましょ!!」
明子さんの明るい声と、わたしの前に差し出された狛治の手に自分の手を重ねる。
外は快晴。
眩しい外には他の”兄弟”も待ってくれていた。
お互いに使う言葉が堅いけど、漂う雰囲気は婚前の恋人と兄弟と仲睦まじくいるようで
それが何より嬉しかった。