第8章 魂の雪蛍
そして、桜華を着替えさせようと着物を脱がせたとき、二人はその体の傷の多さに思わず手を止め、その手で口を押えてしまった。
そして、背中の中央の熱湯をかけられたような跡の上にくっきりと赤く、右肩から背中にかけて前代表の額にあった模様、左の腰から背中にかけてには月が幾重にも折り重なったような尖った痣があった。
あまりに驚いて、止まっている時間が長かったのか、不可解におもった桜華は、二人にどうしたのかを尋ねた。
「桜華様、この痣は.....お気づきですか?」
「痣?」
「前代表にあった痣とそれと似たような...、あ!!日神楽舞踊でお召しになる結月の衣装にそっくりな痣が背中に.....。
それにお体があまりにも傷だらけで...。」
涙ぐむ二人に戸惑いながら、姿見鏡で己の背を見ると、その痣のあまりにもくっきりした色に桜華も驚いた。
「痣には驚きましたが、もうこの傷は狛治と共に乗り越えてきたので大丈夫。
心配おかけしてごめんなさい。
もうすっかり気にならなくなりました。」
穏やかに笑いかけるそれが木漏れ日のように優しく思えて、二人はこらえきれなくなり桜華に抱き着いた。
「桜華様は強すぎます。こんなに傷の跡だらけのお体で色々抱えてなお、そんな笑っていられるなんて.....。」
ぎゅうぎゅうに抱きしめてきて涙を流す二人をなだめる。
でも、その暖かさが心にしみわたって伝わってきた愛が凄く嬉しかった。
3人で暫く抱き合った後、また和やかに話が弾み、次第に明子の楽しそうな声が部屋から漏れていった。