第8章 魂の雪蛍
「何から何まで有難うございます。わたしたちの事をそこまで思っていただいて、本当に嬉しい。」
「俺の方こそ、皆にいろいろ心配させて、俺に合わせてもらいながら、出来てないことをいろいろ気づいてもらってばかりで…。」
二人が感謝の言葉を並べていると明子がいう。
「今日はもう、堅いことはなしですよ!!さ、御仕度しましょう。」
「そうだ。今日は家族、兄弟として楽しみましょう。狛治さんは俺についてきてください。」
そう言われながら手を引かれてそれぞれの部屋に連れていかれた。
桜華が二人に連れられて行った部屋には、色浴衣が2着
白地に太さが異なる空色の縞模様に青と白の大輪の椿模が咲く色浴衣と
白と紺の幾何学模様に夏の花が咲く色浴衣
そして、髪飾りと化粧品が準備された化粧台。
「桜華様のようなお美しく普段着飾らない方だと腕が鳴ります!!
椿柄の色浴衣はお昼、白と紺の色浴衣は夕方一度こちらに帰っていらっしゃったときのお着換えです。」
「凄くきれい。祭りはそれこそ、最後の夏に家族で出掛けたきりです。」
「そうでございましょう?今日はとびきり美しくなって、狛治さんのお顔を真っ赤にする作戦です!!
姉さんと気合入れてまいりますので、素敵な一日にしましょう?」
もはや、明子が一番に楽しんでいるのではないかと思うような笑顔に苦笑する。
しかし、そんな桜華もやはり年頃の女である。
目の前に立ち並ぶ浴衣や、化粧品、髪飾りの色合いに心を躍らせていた。
「有難うございます。あれからたった数年で、わたしもこのようなものが着れると思うと感慨深いし、皆さんの心が何よりも嬉しいです。」
喜々としたその表情に二人は顔を見合わせて笑顔になった。
「そのような表情が見れてわたしも幸せです。今日はいろいろな桜華様の表情が見れそうで楽しみです。」
気付ける準備をしながら
美紀も優しい笑顔を浮かべて声をかけた。