第8章 魂の雪蛍
それから数日過ぎた。
朝餉を二人で済ませ母屋に顔を出せば、何か慌ただしい様子。
「おはようございます。今何をなさっているのですか?」
通りかかった明子に声をかけると、待っていたかのように表情が明るくなった。
「あら、桜華様、狛治様、おはようございます!
今日は、この村で最大のお祭りで”精霊流し”があるのです。
お二人にも、色浴衣を準備させていただきました。ですので、本日の鍛錬はお休みくださいね!!
今回の精霊流しは、日神楽家に桜華様が、生きてこちらにお立ち寄りくださったことをご先祖様にご報告せねばなりません!!」
またしても、聞かされていない事に驚いていると、明子は「お待ちくださいね!」とだけ言い残し、奥に行ってしまった。
「わたしたちがせねばならない事、もう少しご相談いただきたいのに.....。
いくらこちらのお祭りだとしても、わたしも、何かさせて欲しかったです。」
そうぼやいていると、
「俺たちにも、気をまわしてやれるほどの余裕がなかったのかもしれん。特に最近はいろいろありすぎた。
もう、彼らの好意でここまで甘えさせてもらったんだ。感謝しておこう。」
確かに、狛治にいろいろ思いがけない事が続いて身も心も追いついていけてない。
当事者であればなおの事。今の体の状態にまだ慣れていないはずである。
そんな狛治からそのように言われると納得するしかなく、されるがままであるような状況は致し方ない事だと思うことにした。
「そうですね。本当に何から何までしていただいて感謝以外の言葉が見つかりません…。」
そうはなしていると、明子さんが、悟さんと美紀さんを連れて奥から出てきた。
「狛治様、桜華様、今からご準備くださいませ!
悟兄さんが狛治様の御用意、美紀姉さんとわたしが桜華様の御準備をさせていただきます!!
お二人と思い出に海や縁日も行きたいと思っています!!昼の間は一緒に行きましょう!」
明子さんに続いて美紀も楽しそうに
「夜はお二人で回ってくださいな。
お二人でゆっくりと出歩かれたことがないでしょうし、楽しんでいただきたいのです。」
と言った。
ここにきてもう2ヶ月。
狛治と桜華は二人が言うように、鍛錬の時以外はほとんど屋敷の敷地内から出てすらいなかった。