第8章 魂の雪蛍
「日神楽式 術式展開 破壊殺・羅針」
ゴゥと勢いよく狛治の踏み込んだ足から
雪の羅針盤が太陽の炎の色で蜃気楼を伴って広がる。
そしてその瞳が、父のような鮮血のような赤い目になった。
あぁ、懐かしい。
御父様を思い出させてくれる。
そして、その父の”日の呼吸”を交えたあなたの術式に”日神楽式”と名を足してくださる御心が何より嬉しい。
わたしも底から突き上げる力をその父より賜し力に見合うようにせねば無作法というもの。
「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」
「日神楽式 破壊殺 乱式」
刀扇に見立てた鉄パイプから生まれるひとつの大きな三日月の斬撃と炎を纏った鎌の刀身の木刀がかち合って轟音と共に相殺される。
どういうこと?
威力が凄い!熱気が強い!!
では、こちらも
「結の呼吸 参ノ型 月神・匿影蔵形(ゲッシン・トクエイゾウケイ)」
間合いに入った狛治の炎を相殺しながら、闇に近い赤銅色の月輪の斬撃を放つ。
刀扇に見立てた鉄パイプを扇いだ一線に飛んだ斬撃を狛治は身軽に体を跳躍して交わす。
反応が的確で素早い。
そして間髪入れずに次の太刀がくる。
避けることだけを意識してからだの感覚や動きを操る。
ヒラリと交わして飛び上がったまま型を構える。
「結の呼吸 伍ノ型 神金環・結絆(カミキンカン・ムスビキズナ)」
火の粉が輝き、美しく円を描きいて速い速度でまき散らす。
ただそれさえも、狛治の炎に押し消されてしまう。
鎌の木刀に紅蓮の炎を纏いながら一気に詰め寄るも、近づいたことで見えたその額から大量の汗が吹き出し、表情も辛いのを堪えたような険しいものとなっていた。
「狛治、大丈夫?」
不安になってそう尋ねる。
「人の心配より、自分の心配をしてくれ。これだけではくたばらん。」
狛治は安心させるように桜華に白い歯を見せるようにして笑ってみせた。