第8章 魂の雪蛍
それから、雄治さんの声は聞こえなかった。
ただ目の前に広がる美しい景色の中で、神聖な松明の中で雄治さんと女性がずっと絶え間なく厳かな日神楽舞踊を舞う。
武を志す者は自ずと
己が圧倒される強者を前に短時間で感覚が鋭く練磨される。
命の取り合いの時ほど、武者は実力を伸ばすのだ。
戦いの時の精神で相手を観察しろ。
視覚聴覚を最大限駆使しろ
五感を研ぎ澄ませ
肌で感じろ
空気で感じろ
心で感じろ
何一つ取りこぼしのないように。
体の使い方
呼吸の使い方
闘志、精神の操り方
武器をふるう時の手首の使い方
見ていても、感じていてもその剣技の
無駄のない美しさ
炎舞のような神々しさ
攻撃の意思を持たぬ無の境地
無心で闘気のない太刀
そうか……
これが……本当の……
「至高の領域」
なぜだろう、この人のこれは
美しく豪快で息を飲むほどなのに
いつも憂いを帯びてる。
孤独な男だ。