第8章 魂の雪蛍
そして、何より.....
「わたしがいない5年間の間も、あなた方が日神楽家のために尽くしてくださっていること、先ほどの言葉と父のわたしへの想いで感じ取りました。
これからも、共に歩んでくださること誠に心強く思います。
どうかよろしくお願いします。」
亡くなってもなお、わたしを想って作ってくれた環境に亡き父や先代たちの愛と期待と想いの連鎖が彼らが生きてわたしを支えてくれているよう。
その暖かさが心の底から力を漲らせてくる。
日神楽家の本懐はまだ正確には掴めていなくても、その方向性は鬼をこの世の中から消してしまう事であるのは間違いない。
それをわたしに先代たちが託してくれたのなら、わたしが思う”鬼狩り”をしようじゃないか。
そう思えてきた。
いろんな思いにあふれて体温が上昇する。
そして、愛の温かさ故に一筋の涙が頬を伝った。
「はい。これからもどうぞよろしくお願いします。」
巧一様の暖かなまなざしがわたしたちを照らして、彼も頭を下げた。
「棟梁、狛治様の装具の仕上げをしたいのですが.....」
悟が障子の向こうから声をかけた。
「あぁ。大事な話はちょうど終わったところだ。案内してくれないか?」
悟の声のする方へそう声をかけると、
「狛治様、装具が仕上げの段階に入ったそうです。朱音が待っております。悟が案内しますので行ってらっしゃいませ。」
と、障子を開けながら促した。
障子の奥では悟が両手をついてにこやかに待っていた。
「はい。では、失礼します。」
悟の後ろをついていくように狛冶は部屋を出ていった。