第8章 魂の雪蛍
この疑問はおそらく父しか知らない。
巧一様も何かを父から口止めされているのかもしれない。
そんなに重要な情報だとしたら、わたしは知らされないといけない立場であるにもかかわらず、知らない人も多く、知っている人もだんまりだ。
時々、狛治も何かを感じ取っていると思う節がある。
夢で御父様と会ったと言っているけれど、他に何か言われた事があるのではないだろうか。
そんなことを考えてしまう。
でも、もし、言わない、言うか言うまいか悩んでいるとしているのならばわたしのためだろう。
内容はよく分からない。
何も掴んでいない。
ただ、周りを信じて、どんなことを知ってもわたしの事を案じてくれる人がいる事を忘れてはいけない。
わたしがしっかりしていなければ、なにも動じないようにしなければ、支えてくれる人たちを心配させる。
何を知り得てもどっしりと構えてられる自分でなければ。
何も持ち得ていないのなら、自分の内側から豊かにしよう。
強くしよう。
そんなことを思っていた。
「桜華様。どうか難しい顔をされないでください。」
どうやら、思っていたことが表情に出ていたらしい。
「申し訳ございません。今後の事を考えておりました。」
「何事も桜華様らしさを損なうことよう、ご自愛ください。
ここを実家のように思っていただければと存じます。」
そう言ってくださるのは有難いことだと思っている。
だけど、やっぱり何かスッキリせず不安なのは、これからの見通しが立てられていない事。
珠世さんのところについてしまったら、わたしはそのまま鬼狩りに専念できるのだろうか。
「今は、巧一さんを信じて任せよう。どのみち俺たち二人だけで全てをこなすことはできない。
雄治さんも、鬼狩りとしての桜華に期待していたようだし。
何か状況が変わっても一人じゃないだろう?」
狛治に言われて父が期待していたのは経営のことに全く触れてはいないと気づく。
それはそれで悲しい思いもあるのだけど、なぜか腑に落ちて決心できた。