第8章 魂の雪蛍
「桜華様、狛治様、ここを出られてからは早速、鬼狩りをすることにもなると思います。
今申しましたように、刀が折れたり、刃こぼれが生じたりとご不便なこともありましょう。
迅速な対応が必要となってきます。
刀やわたしたちからの伝達、産屋敷当主様とのやり取りの必要が出てくると思いまして、鷹匠から伝達と刀の運搬用に訓練された鷹をお二人分手配しています。
ここを発つ頃には、鷹匠が訪ねてまいります。
そこでお渡しできるかと.....。」
「巧一様、本当に有難いことで感謝しているのですが、なぜそこまでしてくださるのです?
わたしは当主でいると宣言したにもかかわらず、全てを引き継ぐ前に全てを失ったので何からどう手を付けていいかわからないのです.....。
当主と言われましても、今は屋敷も構えてはおりません。資金もないですし、わたしの手元にあるのは狛治の存在と、戴いたばかりの刀扇だけでございます。」
己のふがいなさを恥じて、奥歯に力が入る。
自ずと手にも力が入って僅かに震えていた。
「鬼の被害と今の鬼殺の状況を、先日訪れた炎柱様の御子息から聞かされました。
彼の話によれば、
わたし達を探すというのも大きな要因となり、鬼の被害は増える様子。しかも、隊員は増える兆しすらない。
隊員が少なければ柱になるものも少ないとお聞きしました。
わたしたちが、早く立ち上がらねばならぬのに、今のわたしには....。」
当主になるという覚悟は決めたものの未だに物持たぬ桜華は考え付けば考えるほど、戦う以外は無力であることが身に染みて、焦りと絶望から悔し涙が瞳を濡らした。
「桜華様。
あなたの御父様は伝言”だけ”を残されたとお思いですか?」
巧一が今までにないくらい真剣な顔をして桜華を見た。
桜華は巧一が言わんとすることがわからず?険しい表情のまま次の言葉を待った。
「一家、一族が滅ぶと.....予知されてて、ご誕生の頃から、いや、それ以前から雄一郎様と桜華様に期待していたという代表が、
何もないゼロの状態、もしくは著しくマイナスに落ちたところから、鬼狩りの最終期を期待して託すとお思いですか?」
「どういうことです?」
膝においていた手に力が入った。