第8章 魂の雪蛍
「今後、確認せねばならない事が4つ。
その痣がどう変化するか
今のあなたの力がいかほど強化されたのか
血鬼術にどう反映されるか
人間化がどれほど進み、支配の呪いがどれだけ解かれたのか
今後に大きく関わってきます。
出来るだけ早く、家を再興して、鬼狩り一族の旗を掲げ鬼の被害を減らしたい。」
「あぁ。そうだ。
早速今夜は鍛錬だ。
腕が鳴る。どれだけ君のお父さんに力をいただけたのか、楽しみで仕方ない。
アイツらを殲滅したい気持ちは、形は変わったが鬼になってからずっと胸の内にあるものだ。
桜華の手助けになれるような力を得られたのならこんなに素晴らしいことなど無い。」
闘志をふつふつと燃やすその表情は鬼の頃のような笑みではない、ただ静かに瞳の奥に闘志を燃やすもの。
鬼の頃、最後に上弦全員が無限城に招集されてからもう100年になろうとしている。
100年以上、上弦の顔触れが変わらない事はそのまま、その長い年月彼らに代わる、彼ら以上の鬼が誕生しなかったという事。
きっと、自分が寝返ったことで無惨は怒り狂い、しのぎを削ってその位を争った上弦の鬼どもは今頃、嘲笑っていることだろう。
人間の心を取り戻し、今や肉体も完全に人間になろうとしている狛治は、
かつての同類を嫌悪していた気持ちは修羅や憎悪とはまた違った感情で滅ぼしたいという気持ちに変化していた。
狛治の笑みも心の奥底にあった感情は、出会った頃と比較しても人間らしく穏やかに深いものに変化し、父のような武芸者に成り得ようとしている。
鍛錬の時に見せていた鬼の表情や煽るような物言いは、全て、桜華の心を奮い立たせるための演技のようなもの。
その変化の過程はずっと傍にいた桜華が一番に感じ取っていたのかもしれない。