第8章 魂の雪蛍
「お気持ちが聞けて嬉しゅうございました。
ずっと気にかけていたもので....。」
「そんなに俺は憂いた顔をしていたか?」
「えぇ....。」
困ったようにどこか恥ずかし気な様子で後頭部を搔きながら、
「そうか.....以後、気を付ける。」
と言った。
その様子に安堵して胸をなでおろす。
少なからず狛冶の意志で消えることはないと聞いただけでホッとした。
「ところでだ。夢から覚める瞬間、桜華のお父さんに太陽のような炎の刀で斬られたが、そこが、今でも燃えるように熱い。
何か心当たりはないか?
最初に桜華の生家の事を聞いて以来触れてこなかったが、先代当主の事を含めて知っておきたい。」
「父は通り名で雄治といいますが、本名は形式上、次の当主になる予定だった兄しか知らされていません。
共に舞踊を踊っていても知らされるのは当主の妻と嫡男のみ。
ただ、今までは嫡男と、第二子か長女に教えて来たのは、それぞれの舞う舞踊に分かれていたようですが、わたしと兄は共に父から直接指導していただきました。」
「そしてその時に父が兄に主軸として指導していた舞は、会得すると体が燃えるように熱くなると聞きました。
そして体が軽くなり、無駄な動きが少なくなり、
疲れることなく舞えると.....。
...え?もしかして....。」
狛冶が言う起きてからの症状と、父から聞いた言葉が当てはまる事に気づいた桜華は一つの可能性が脳裏を過った。
「まさしくその症状が今、俺の体の中で起きている。」
狛冶が神妙な面持ちで、桜華を見た。
「いつもより、からだが暖かかったのは、お日様に当たっていたからではないのですね?」
確認するように尋ねる。
桜華の中に緊張がはしった。
「日にもそんなに長い時間当たっていない。
目覚めた時から斬られたと思うところが焼けるような感覚があるし、体の中に炎が燃え盛っている感じがする。」
「その斬られた当たりを見せてもらってもよろしいですか?」
「わかった。」
そういって、着物の上を襟から割るように脱いだ。
一つの可能性.....
それが核心に近づく
桜華は目に映ったそれに大きく目を見開いた。