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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第8章 魂の雪蛍





目覚めると狛治がいなくて、


屋敷中探したの。


どの部屋にもいない。



ただ玄関に人影があったから、もしやって思って慌てて出ていったら、




太陽の光に手を伸ばす逆光になった後ろ姿。



日に当たれるようになったの?



「狛治。」



近い距離なのに、彼に言葉は届かなくて


どこかに行ってしまいそうなくらい


儚くて切なげな後ろ姿。




何かを思い出しているの?



伸ばした手のひらの向こう側に何が見えてるの?




「狛治……?」




思い出した過去が、そちらの世界がいいと思ったらわたしを置いてそっちに行ってしまうの?




いてくれるって信じてるのに、信じたいのに



物悲しそうで、憂いに満ちた後ろ姿を見ていると不安になってどうしようもないの。



ゆっくりと振り返ったその顔には、痣程度に薄くなった罪の線と刻印が薄くなった瞳。


割れたように筋が入っていた水色の目は白さを取り戻しつつあって、


人肌の色をした人間らしさが進んだ姿に目を見開いた。



「もう、日に当たれるの?」



そう聞くと優しい顔のまま静かに頷いた



泣き笑いのいつもの笑みを浮かべるその顔は


涙の線が数本太陽に照らされて光っていた。





わたしの姿をとらえて優しく見てくれる大好きな人が消えてしまいそうで、



でも、太陽に当たれるほど人間に戻れた彼に戻れたことが嬉しくて


ぐちゃぐちゃになった心のまま、狛治に飛び込むように抱き締めた。




暖かいお日様の匂い。狛治の温度、心音………。




全部体で感じたくて力一杯抱き締めると

それ以上を返してくれるように抱き締めてくれる。




「桜華のお父さんが、夢の中で俺の中の"鬼"を斬ってくれた。

まだ、鬼の要素はあるようだが、俺は今も生きている。」



狛治の左手はしっかりとわたしの腰を抱いたまま、

右手でわたしの顔を引き上げて視線を合わすと

ゆっくり顔が近づいてきてそのまま口づけた。



その首に腕を回して優しい口づけに応えた。



照らしてくる太陽は暖かでわたしたちを御父様が包んでくれてるようだった。







二人に気づいた一家がほほえましく暖かに二人を見ていた。



穏やかな朝で一日が始まる。





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