第8章 魂の雪蛍
身を焼くような熱さと痛みで飛び起きた。
起きたのは空が白けてくることで、俺は少し汗をかいていた。
幸い、隣にいる桜華はまだ穏やかな顔で寝息を立てている。
桜華にはまだ夢の事は言えていない。
言っていいものだろうか、あいつとにている件もあって、自分も何だか整理がついていないからだろうか。
整理がつかないのは、桜華にどう話すか、気づくまで見守るかという彼女にどう対応するかという話だけなのかもしれない。
俺にも本当の事はよくわからない。
だが、
俺の中ではそれがどうだろうと、誰の子だろうが桜華は桜華で見捨てる気も嫌いになる気もない。今まで通りだ。
それだけははっきりしている。
「……狛治」
起きたのかと思って見やるが寝言だったようで、猫のように俺の腕にすり寄る。
可愛らしい………。
無防備で、無垢な今の顔を見ていると俺の心の中も綺麗に洗われていくような感じがする。
漆黒の艶やかな髪を撫でると気持ち良さそうに身じろぐ。
何故だろう
今日はやけに体調がいいのに
からだの中で何かが燃えるように熱い。
夢の端で見た炎が自分の中に入ったような感覚だ。
体を見ると、藍色の線が明らかに薄くなっている。
桜華の部屋へ行き、化粧台へ向かう。
鏡を覗き込んで瞳を見れば、
明らかに鬼の位を示す刻印が薄れている。
あの男の炎が原因としか言いようがない。
ただ上弦の位にいた俺には
まだまだ、あの世にいる人間が精一杯繰り成す技だけでは
全てを消す力は
持ちえなかったということだろうか………
だけど、体の底から突き上げるように溢れる力は
俺の体に強く残っている。