第7章 残されていた愛 繋がる愛
人間としてはどう思うかは解らないが、戦力で言えば、両手を上げて喜びたいところだろう。
だからと言って、一般的には受け入れられない存在なのには変わらない。
それを覚悟していたが、杏寿郎がそういったことに少し肩の荷が下りた気がした。
桜華の気持ちを察してか、
「そう肩肘張ってると疲れる。今を自分と向き合い大切に一生懸命にいきる者は必ず報われる。
桜華様も堂々としていればいい。」
「ごめんなさい。仰る通りですね。
杏寿郎がまさかあんなに言って下さるとは……。」
「桜華様は、笑っていればよい。さっきのは本心だ。二人が"準備"を終えてこちら側に来てくれることを楽しみにしている。
俺ももっと強くなり立場を上げ、二人を支えられるくらいにはならねばな。」
ハッハッハと豪快に笑う杏寿郎がすごく頼もしく思えて、桜華の心を暖かくした。
「そちらに行った時は、瑠火様の墓参りもさせてください。
生きてくださいね。」
不安も取り去った笑顔で最後の言葉をかける。
その笑顔がまた杏寿郎の心に太陽に照らされる海のように綺麗に見えた。
「桜華様は朝日に照らされる凪いだ海のようだな。
あぁ。必ずまた会おう。今度は桜華様にも稽古をつけていただきたい。」
そう言って照れ臭そうな表情を浮かべる。
「喜んで。手加減はいたしませんよ。
道中お気をつけて。」
「望むところだ。では、達者でな。」
そういって、杏寿郎は背を向けた。
「お元気で…」
台風のような嵐のような、熱い男は、
真夏の暑さを思わせないくらいに爽快に歩いて屋敷を去っていった。