第7章 残されていた愛 繋がる愛
その朱音の物言いはまるで娘の友人に対しての母親のように思えて桜華は慌てて頭を下げた。
(朱音様……こんなときにまで……。)
朱音が自然にそう言ってくれたことに頭が上がらず、胸がいっぱいになった。
「うむ。二人は俺の友人、先輩と言うべきか……
こちらこそよろしく頼みたい。」
言葉でしっかりと狛治のことを友人と言ってもらえたことにも心が暖まるのを感じた。
「杏寿郎さん!」
奥から明子が元気な声で出てきた。
大きな荷物を抱えている。
「明子殿、それは……」
「弁当10人前!どうぞ持っていってください!」
そう満面の笑みでいう。
「ん?これはこれは!気を遣わせないよう朝のうちに発とうと思っていたのだが……。
すまない。気を遣わせてしまった。」
「いいんですよ!ここら辺は水辺も近いし景色がいいのでゆっくりとお帰りください。」
そう言いながら大きな包みごと手渡した。
「道中お気をつけて。」
いつもお調子者そうな表情が少しだけ優しい声色になって微笑んだ。
「あぁ。最後まで忝ない。」
その笑みに答えるように少し声を落とすもハツラツとした笑顔で言葉を返す。
見送ろうとこちらに向かってくる巧一、朱音に
「玄関まではわたくしが。」
と、断りをいれて、二人を背に門まで歩いた。
「どうされた」
「耀哉様は、わたしどもがいなくなった時どのような御様子で……」
桜華は3人でいる時に聞けなかったことを聞いた。
「ちょうどあの頃は会議も終わった頃だったが、あんなにも大きな事件だったからか緊急招集をかけられていた。
御館様は気丈に振る舞ってはいらっしゃったが、一度に家族同然の一家とその親族を失ったのだ。
暫くは寝込むことが続いたらしい。
きっと今ごろ安心されているだろう。」
「申し訳ないことをしました。そのなかでも彼は一人で、戦っていらしたのですね。」
申し訳なさそうに俯いてこぼすようにそう漏らした。
「もう、桜華様が生きておられると解ったのだ。そして御館様は日頃から鬼を滅することに手段を選ばないと仰っている。
狛治殿が、人間側についたことをさぞ喜ばれるだろう。」