第3章 無限城
「………久しいな。 ……猗窩座。」
「何の用だ。」
目の前にいるのは上弦の壱"黒死牟"
鬼の特性で、お互いに嫌悪感を抱いているため、
召集がかけられるなど
滅多なことがない限り他の鬼との接触はしない。
だからこそ、自ら部屋に呼び寄せることに少し驚いていた。
「……長らくおまえの気配が薄かった。
無惨様に呼ばれたのもその件だろう。」
「だったら何だ。」
「………5年前、私にも同じ現象が起きた。
おまえから感じる女の気配を目の前で感じだことがある。」
思いもしない言葉に猗窩座は目を見開いた。
黒死牟の不気味な赤い六つ目全てが猗窩座の何かを観察するように見ている。
「………5年前、"あのお方"の申し付けで、ある一族を葬った。」
「覚えている。」
5年前の出来事。それは鬼狩り(鬼殺隊)を統括する産屋敷家にとって長年の深い繋がりがある財閥の会長一族を滅ぼし、鬼殺隊の勢力の弱体化を狙った鬼舞辻の謀。
それを一任されたのが黒死牟だった。
「………もしその女が、あの一族の生き残りならば
………非力かもしれないがやめておけ。」
「どうした。全ての人間を葬ったのではなかったのか。"あのお方"の命令に背いたか!」
「…私が女の一族を葬った時、ただが小娘一人を何の理由もなく俺がただで見逃したとでも思ったか。」
ドス黒い怒りを込めた重圧を含む声がジリジリとその場を震撼させる。
その怒りに触れて猗窩座は戦闘の構えをとった。
「?!!どういうことだ」
「殺さなかったんじゃない。殺せなかった。」
「…………女の血の匂い、味、何も感じなかったのか?」
「感じていない。何が言いたい」
「……では別人かもしれんが念のために忠告する。」
「……………私がその少女を殺せなかった理由はあの女の血に危険な匂いを感じたからだ。
…稀血だが、希少中の希少で”鬼成不血(オニナラズノチ)”とも言われる。
飲めば飲むほど浴びれば浴びるほどに、その人間の血しか飲めなくなると聞いている。
私が知る情報はそこまでだ。
………だが、あの女の血にはそれ以上の危険なにおいがした。」