第3章 無限城
「貴様には女を食わず殺さないことを暗黙に許可しているが、助けることを許した覚えはない。
なぜ助けた。」
確かに猗窩座は鬼狩りだろうと女に自ら攻撃する事もなければ喰らいもしない。
それに同じく上弦の鬼である童磨は自らの教団の教祖。信者は全て人間で構成されており、主にその信者の中から人を喰らっている。
鬼狩りでなければ生きた人間との交流は特に大した問題ではない。
しかし、今知り得た情報により
無惨は明らかに猗窩座がかくまっている人間に対してよく思っていない。
「自害寸前のところを条件反射で助けました。
女は鬼狩りではない庶民の様子。気がすんだらそのまま返すつもりです。」
当たり障りのない答えだが本心に相違ない。
用意していた言葉をいったまでだ。
「私から上弦の鬼への交信を断つとは何とも興味深い。話すようになれば連れてこい。
話せる状態になるまで月に二度報告せよ。」
やはり
鬼狩りでない普通の女
精神を病んだ状態
この二点で現在の段階での危機を感じていない様子だ。
すぐ殺せという指示がでなかった。
「気配を辿れぬなら、新月の夜に今回いた場所に来い。
それで文句はないな。」
今回ほどの距離か時間を彼女からとらなければ、無惨に通じない。
そのようにした方が最善だろう。
「御意」
誰にでも信頼を置かない無惨だが、その中でも猗窩座の真面目で忠実な姿勢と強さに対しての向上心を高く評価し少なからずも信用はしていた。
なので様子を見るといって今回もそれ以上の詮索はしなかった。
「楽しみにしている。」
言葉と裏腹の表情と共にそう言い残して、無惨は戸を閉めた。
先ほど見つけた鍛錬する場所を目指している途中、琵琶の音が聞こえるとともに体が宙に浮いた。
これには心当たりがない。