第7章 残されていた愛 繋がる愛
膝の上に置いた手が、まだ鬼の姿の闘う手に包まれる。
その手に日輪刀を握る前に狛冶に杏寿郎との出会いがあって本当に良かったと思っているのです。
これから、わたしについてきて人間に戻ったことで、鬼殺隊関係者からいろんな批判、誹謗中傷など受けていくかもしれない。
そのような人たちとの関係が出来る前に味方になってくれる人が出来たのならきっと心強いだろうから。
おいでと誘われて、肩を抱かれて見上げるは上弦の月。
外にどこからか虫の音がきこえる。
もう、耀哉様にはわたしが生きていること、鬼と共にいることが知れたことでしょう。
そして、鬼舞辻無惨を滅ぼす事に対して手段を選ばないであろう彼は、恐らく、"上弦の参"がこちら側についたことを喜んでいるはず。
わたしが生涯の伴侶として選んでいることは別として。
「貴方がいてくれたら、わたしは何にだってなれるのです。
ずっと側にいてください。
わたしはもっと強くなりたいのです。」
肩を抱く狛治の手の力が強くなる。
「当たり前だ。」
ただのその一言が胸の奥に深く染み込んだ。
とある神宮の鳥居の上。
人から身を隠すように上弦の月を見る菖蒲色の袴を着た男がいた。
静かに佇むその男はその猟奇的な赤い目に憂いを帯びて、数年前の己が起こした事件を思い出している。
「……あの女に私は何を感じているのだ………。
………なぜ生かしたいと思っている……。
私は…………」
男の耳にはどこからともなく赤子の鳴き声をとらえ周囲を見る。
「………幻聴……。」
途端に胸に感じた痛みに着物の胸元を掴んだ。
そして、聴こえたそれを振り払うように頭を振りほどき再び闇夜に姿を消す。
男がいた神宮の奥で罪の匂いが人々をまた恐怖のどん底に引き落としていた。