第7章 残されていた愛 繋がる愛
「俺が考えていることがよく解っているようだな。」
「それはもう、ずっと一緒にいますから。
狛治は、思っていることも至極解りやすく。何事にも真っ直ぐで嘘や取り繕うことがありません。」
その言葉に、先ほど杏寿郎にかけた言葉を思い出し、思わず吹き出した。
「どうしたのです?」
「ハハハハ.....いや、ククッ、いや、そうか.....。先ほど杏寿郎にも同じことを言ったとおもってな。
それを今度は桜華から言われるとは思っていなかった。」
「わたし以外の方でそのように笑える方が出来たのはわたしにとってすごく嬉しい事です。
これから、長い付き合いになりましょう。
大事にしていきましょう。」
桜華は目じりを下げて優しく微笑んだ。
「桜華。」
「はい。」
「ありがとう。君が心を人間に戻してくれてから、俺は幸せだ。」
「お互いさまでございます。わたしも狛冶に助けていただかなければこれほどまでに幸せを感じることはできませんでした。
こちらこそ有難うございます。」
君は
”お互い様”
”こちらこそ有難うございます。”
いつもそう返してくれる。
俺は本当に毎日が胸が熱くなるほど尊くて、泣きたくなるほどの感謝で溢れている今が凄く愛おしい。
そういえばまた”お互い様”と君は言うのだろう。
思いが一緒だと共有できてるようでまた暖かい。
「狛冶、もっと幸せをいっぱい感じて生きていきましょう。
あなたは生きてるから、幸せになっていい。
罪に溺れて自分を卑下なさらないでください。
常に自分自身と向き合って自分がたどり着きたい在り方を貫けばいいのです。」
『他人と背比べをしているんじゃない。
戦う相手は常に自分自身だ』
誰かの笑顔が記憶の奥で俺の心と目頭を熱くする。
誰だ.....。
思い出したいんだ。
その暖かさを。
俺が人間だった時、
俺は今の様に暖かい人たちが傍にいたんだと思う。
もしそれを手放してしまったのなら
もう俺はこの手をしっかりと離さない。
この手がここにある事が奇跡だということを
忘れたり当たり前だなんて甘えたりしない。
隣にいる桜華の手に自分の手を重ねた。
その暖かさが身に、心に染みる。
「あぁ。そうだな。
自分をもう二度と見失わない。
この手を離さない。」