第7章 残されていた愛 繋がる愛
あのあと、俺が風呂に入ってる間に目覚めた桜華が自分も入ってくると言って今は一人。
杏寿郎は明日帰るのでと、用意した部屋に入っていった。
一人空を眺めているといろいろ思い出す。
鍛練と殺戮と戦いの修羅の世界から抜け出してまだ1年も経ってはいないのに、今までの10年分を無理やり詰め込んだような充実した日を送っている。
何とも不思議なことだ。
鍛練する日がどんなに続いてもキツくても今までのそれとは楽しみも充実度も何もかもが違う。
桜華の見違えるような成長が嬉しくて仕方ないし、今では本当にあの時助けたのは本当に本人だったのかと思ってしまうほどだ。
もともと桜華は精神力が強かったのだろう。
普通なら精神をやんだのなら何年もかかって正常に戻るようなこともたった数ヵ月でその目に輝きを取り戻した。
それからというもの、沢山の出会いに恵まれて、鬼であり上弦で無惨に近かった俺を受け入れて貰った。
全部桜華が俺に見せてくれた世界だ。
当たり前じゃない。
だからといって自分がそれを壊すのではないかという恐れを持つより感謝していこうと思う。
そっちの方が与えてくれた者が一番に望むことなのだ。
どれくらいそうしていたのか、桜華が部屋に入ってきた。
「どうしたのです?」
横に座って俺の目線の先にある上弦の月を見上げる。
「桜華にであってからの事を思い出していた。
明子さんはもう戻ったのか?」
「はい。自分の部屋が寝やすいと……。」
「そうか……。」
「あっという間でしたね。いろいろありすぎて……。
でも、もしあの時、狛治がわたしを見つけてくださらなければ、
あの時助けてくださったのが別の人ならば、わたしはここまでくることはできませんでした。
まだまだやり遂げなければいけない事も、貴方がいてくださるから出来るし突き進めると思えるのです。」
先ほど考えていたことに対して的確に桜華の思いを言われたようで驚いていると
「杏寿郎といろいろお話になって思いに更けてらっしゃると思ったので……。
狛治がわたしに思っていることと同じように、わたしも今ここにいられることが貴方が見せてくれたものと思っています。」