第7章 残されていた愛 繋がる愛
二人が屋敷につくと、深夜にも関わらず明子が風呂と寝る支度をすませて満面の笑みで出迎えた。
「もうそろそろお帰りの頃かと、お風呂と寝床の準備をしておきました。
暑い中、毎日の鍛練お疲れさまでございます。」
鍛練が夜遅くなることが多く、このところ明子が夜の支度に着てくれることが多かった。
今回は客人もいることもあって手伝いに来ていたのだ。
「明子さん、ありがとうございます。」
狛治が礼を述べると、明子はからかうような笑みを浮かべた。
「今夜の暑さよりもお二人の方が些かお熱うございますね。
狛治様が桜華様に優しくされるときのお顔は相当な美男子でございます。
悪い女子にもご注意くださいね。」
「確かにそうだ。明子殿。
取られることばかり気にしていては、妬かれることもあるやもしれんな。」
先ほど気恥ずかしい思いをした分、杏寿郎は明子のからかいに乗っかり、狛治は困ったように笑った。
「桜華以上になれる者はおらん。元鬼がそんなにちやほやされることもないだろう。」
狛治の返しに杏寿郎と明子は顔を見合って笑った。
「桜華様の立場が大きくなればなるほど、いろんな者が周りにつくのは事実だ。
ま、狛治殿の桜華様に対する言動からは心配することはないだろう。
実際に俺は何一つ心配などしてはいない。」
仁王立ちで満面の笑みでそういわれて、狛治はむず痒さを感じた。
「ささ、桜華様を寝かせてきてあげてください。杏寿郎さんはお風呂をどうぞ。」
「「あぁ、感謝する。」」
二人の息の合いように明子は驚いたもののまた面白いものが見れたとニィと歯を見せて笑うのだった。