第7章 残されていた愛 繋がる愛
手合わせは狛治の合図で終わりを告げる。
合図というよりは桜華を追い詰めて刀扇をひとつ手から叩き落とすといった感じだ。
強さはまだ狛治が比べ物にならないほど強い。
なぜなら桜華は傷ひとつ負っていない。
まだ狛治が加減ができているということを意味する。
それができる余裕がまだあるということだ。
桜華は疲れた様子で地面に手つき肩で息をしている。
狛治は彼女のそばに行き肩を貸して立たせようとした。
「狛治殿、いいのだ、俺が行く。休ませてやってくれ。」
そういって、杏寿郎は二人に歩み寄った。
桜華は申し訳なさそうに眉尻を下げて二人を見た。
「3つとも体に大きな負荷がかかるようです。いつも鍛練のときはこのような状況で………。」
「あれだけの威力がある型をその華奢な体で引き出し操ること自体が驚きだ。
いいものを見せて貰ったし、俺の目標が一層明確になった。感謝する。」
そういって桜華を労った。
「目標?」
「うむ。あなた方に追い付くことだ。
そして強き力を持ったものとして
人を助ける責務を全うする。」
勇ましく目を見開いて、心の中に炎をごうごうと滾らしている様子に未来の柱を見ているような感覚がした。
「お前なら成せる。」
狛治の言葉に同調するように桜華も杏寿郎に向けて微笑みかけた。
「有り難う。」
穏やかな雰囲気になってくると、気が弛んだ桜華は疲労に耐えかねて
「ごめんなさい。今日は些か力を使いすぎました。」
と、狛治の胸に顔を埋めるようにもたれ掛かった。
「休んでろ。俺が連れていくから…。」
その言葉に安心しきったように桜華が瞼を下ろしていくのを狛治が労るように髪を撫でる。
杏寿郎はそれを少し切な気な表情で見つめていた。