第7章 残されていた愛 繋がる愛
所は変わって再び細手塚家。
早めの食事を済ませ二人が夜鍛練する場所に杏寿郎と来ていた。
「俺は払うか避けるくらいしかしない。
桜華でも舞や呼吸法を日神楽舞踊として習得できている段階から俺と体術の稽古をはじめて今で4ヶ月。
桜華が持つ刀扇と俺の血鬼術を使っての鍛練はここに来てからだ。
正直、異例すぎる成長速度だから比較にならんが、
普通の人間ならば杏寿郎の今感じる強さから柱になるまでは5年はかかる。」
「現役の柱の息子なら、今の現状で諦めることなく全力でかかれ。
俺を人を襲う鬼だと思い全力で殺す気で来い。」
杏寿郎はまだ最終選別にも出ていなければ、代々鬼狩りの家であるというだけで鬼そのものと対峙したことはない。
父親やその付き合いのある隊士の話を聞かされているだけで鬼というものを知らない。
それもあって相手が本気を出さないと宣言してくることに、まだ父親の寸分の一にも満たないのかと屈辱的な気持ちもあった。
だが、やはり桜華が口を挟まないところを見ると狛治の思っている通りという事実と、桜華はその男に血鬼術を使わせて激しい戦闘をさせる程の実力があることを思わせる。
それも、舞踊を剣術に変えてすぐ上弦の鬼で上位にに君臨した男に血鬼術を出させた程だ。
(言ってることはごもっともなのだ。
今の段階では差が違いすぎる。
今の俺はただ全力を出すのみ。)
そう己に言い聞かせる。
「心得た。」
杏寿郎の燃えるような大きな目に闘志が漲る。
その表情に桜華と違った燃えるような熱いものを感じた。
「フッ、いい目だ。終わりは杏寿郎が立てなくなるまでだ。」
「そこまで付き合ってくれるとはなんとも有難い。
よろしく頼む。」
「それまでにいくつ俺に技をかけられるかな?
……来い!」
「炎の呼吸 壱ノ型」
「不知火」
ゴォォと太刀から吹き上がる炎が一直線に狛治に迫る。
しかしそれを軽々と避けて
追いかける杏寿郎の炎を伴う刃をひらりひらりと交わしていく。
それでも歯を食い縛り果敢に剣を振るう執念と折れぬ心をしっかりと狛治は感じ取っていた。