第7章 残されていた愛 繋がる愛
「罪の重さは常々感じている。それに苛まれて悶え苦しみ押し潰されそうになる日もある。
やったことはもとに戻すことは出来ん。いくら悔やんでも足りることはない。それが歯痒く思う。
だからこそ俺に対しての批判は受け入れる。理不尽があっても他人を責めることはできない。
ただ俺は、自分が守りたいものが守られればいい。
償いは、最前線で鬼を滅ぼし、自分に偽りなく生きていくことでしていこうと思っている。」
「うむ。いくら突き詰めても最終的にはそこに至るな。
そして、狛治殿が桜華様をお救い下されたときの状況を想像するに、
食うことも攻撃することもなく献身に看病することがいかに困難だったかを思う。
狛治殿のしたことは人間でも早々出きることではない。
御館様も日神楽家の忘れ形見である桜華様がこうして息災であることを喜ばれるだろう。」
杏寿郎はまだ、鬼が、元鬼が桜華と一緒にいることに納得いったわけではない。
だがその覚悟事態は本物であり、自分と向き合い前に進もうとするその心と、
桜華の鍛練につきっきりで、桜華の立場を立てようとする姿に、自分の意見は立ち入る余地はないと思った。
ただ鬼という言葉への嫌悪感だけが自分を納得させてないのだとそう思った。
「杏寿郎、呼吸は使えるのか。鬼狩りになるつもりはあるのか。」
狛治が静かにそう尋ねた。
「来年の最終選別に向けて鍛練をしている。呼吸の習得は手探りの状態だがどうにか形になってきたところだ。
俺も父が精力的だった頃のように弱き人を助けていくつもりだ。」
決意固く、しっかりと見据えて答える様子に狛治の口角は上がった。
「いい。その表情といい、精神も……。全く揺らぎがない。
最終選別とやらが鬼狩りへの登竜門ならば
腕前を見てやろうか。
実際に鬼がこうして目の前にいる。
もちろん大事な未来の隊士だ。怪我はさせん。」
その声色といい表情も含めて愉しそうなその様子は
強き者と拳を交えることが好む猗窩座が混じる顔。
その様子に杏寿郎は狛治が柱である父ですらも凌駕する程の強さを感じとり、元々の大きな目をさらに見開いた。
「あぁ。有難い。
まだ狛治殿の足元にも及ばぬくらいだが是非ともお願いしたい。」