第7章 残されていた愛 繋がる愛
「俺は桜華様も前代表も悪く思っていない。
あのような穏やかな優しいお方が家族のためにも剣を振るわないとなると、重大な何かを抱えての事だったと俺は思っている。」
「そう仰っていただけるだけでも嬉しく思います。」
そもそも産屋敷邸には耀哉様に用事がある時にしか行っておらず、柱と話す機会も柱合会議と重なった時だけだった。
しかも、杏寿郎が自ら声をかけても槇寿郎にひきはなされて今のように面と向かって話したことは数える程しかなかった。
「耀哉様の御容態は?」
「呪いの痣が少し蝕んではいるが、まだ比較的元気そうであられる。事件後、産屋敷一族の慣習で御成婚された。今は4人の御息女様がおられる。」
そうですか。安堵と慈愛の笑みをうかべて、そっと息をついた。
「ところで俺も確認したいのだが、見慣れぬ呼吸を使う剣士とは、桜華様の事だろうか?」
「はい。我が家で400年間"日神楽舞踊"として受け継いできていたものが舞踊ではなく剣技であることをこちらに来て聞かされました。
わたしに至っては刀扇という武具を使ったものです。
そして、わたしの代で鬼のいぬ世になる。舞を呼吸の剣技にとの父から遺言を奉り、今狛治と共に鍛練しているところでございます。」
「そうだったのか。鎹鴉が報告していたことは恐らくそれだな。
これは御館様にお伝えしてもいいのだろうか。
出来ればこの窮地、桜華様が御館様と手を組んでいただけたらと、今の話を伺ってそう思った。」
「その報告するか否かはお任せします。
しかし、お会いするのは、こちらも準備することがまだありますので、お会いできるのはまだまだ先のことになりそうです。
彼を人間に戻し、無惨の呪いを解き、そして日神楽一族の全容を把握しなければなりません。
父と交流があったという鬼医者に会わねばなりません。
しかし、鬼はわたしたち二人でも滅していきます。
狛治の刀もあと一月で出来上がるので。」
「それはそれは…………。
願ったり叶ったりだ。同じ組織ではないがこうして刀を振るう者がいるというだけで心強い。
…………いろいろ聞きたいことが多すぎるな。俺が把握していないことばかりだ。
しかし、鬼が日輪刀を握る日がくるとは……
君のことも知りたい。今は人を喰らわんのか?どう凌いでいる。」