第7章 残されていた愛 繋がる愛
慣れないことに一瞬戸惑うも桜華は上座の中央に着座した。
目の前の杏寿郎は凛々しく背筋を伸ばし、真剣な面持ちでこちらを見ていた。
そして一番の不可解なことを先に問う。
「杏寿郎。まず確認したいのです。
今隊服を着ていないようですが、鬼殺隊には正式に入隊されたのですか?
それでなくても、強い鬼がいるという情報を入手しているのなら、柱が出向いてもおかしくないと思うのですが………。」
本人も聞かれると思っていたのか表情ひとつ変えずに返答した。
「実はまだ入れてはいない。桜華様方一族の事件があった頃、実は俺も母、瑠火を亡くし、以来父が酒浸りになってしまった。
以後、戦闘を伴わない任務は俺が出向いている。
それに、俺も、こちらにくることを仰せつかった時桜華様と同じことを思った。
しかし、ここにきて桜華様のお姿を見た瞬間、俺でなければいけない理由が解った気がする。」
「瑠火様が…。お悔やみ申し上げます。
槇寿郎様も…。心中お察しします。
杏寿郎でなければいけなかった理由とは……
どういうことです?」
杏寿郎は静かに答えた。
「あの事件以来、柱を引退する者が相次いだ。もはや、日神楽家の顔を知るものは煉獄家のみ。
入隊者も減って上に上がれる者も格段に少なくなってしまった。
現在柱は3名。岩柱、音柱、我が父と共に在籍しているが2名は入隊したのもあの事件以後。
恐らく御館様は、鬼と共に鍛練しえる呼吸を使える剣士で、桜華様のことを前代表が痣者ゆえにその強さで連想するも、何らかで確信は掴めなかったのだと。」
「そんなに危機的な状況なのですか?!わたしたちどもの失態で………
恐らく、父に最後まで期待していた者が多かったのでしょう。
父は死ぬ間際まで刀を振らなかった。
何か強い信念が故だったとは父の性格ゆえに解ることですが、それが解るのは我々家族のみ。
心苦しく、申し訳なく思います。」
以前は柱は10人程いて隊士も多かった。その事を思い出し桜華は居たたまれない気持ちになった。