第7章 残されていた愛 繋がる愛
「杏寿郎、頭をあげてください。鬼のいない世を志す同志ではありませんか。
人懐こくいつも声をかけてくださったことよく覚えているのですよ?」
そういって杏寿郎の肩を押して顔をあげさせた。
「本当に桜華様だ……。まさか生きていらっしゃるなど………
なぜ連絡をくださらなかった。
御館様は血眼になって探していらしたというのに……。」
「事件の後人買いに売られ数年日の明かりを見れず、精神をやられており今のように立ち直れたのは極最近の事なのです。
その後助かった経緯のこともあって、こちらの事が片付いてから産屋敷邸に生きていることを知らせようと思っておりました。
ご心配をお掛けしました。」
そういって眉尻を下げて唇を噛み締める姿で俯いてしまった桜華に慌ててその肩を押して顔をあげさせた。
「何も知らずして不躾なことを……!
申し訳ない。」
オロオロする杏寿郎の様子に笑みをこぼして話を戻した。
「耀哉様の申し付けでありましょう?
どこまで察しがついているのか存じませんが、受け入れがたい方を見るかもしれません。
心してお入りください。」
「もしや……鬼ではあるまいな?」
睨むように目を見開き、低い声で牽制するようなもの言いだ。
しかし想定内。
代々鬼狩りとして昔からある名家だ。
そして鬼狩りを支える組織で産屋敷一族と共に鬼のいない世界を目指していた日神楽一族の末裔である桜華の立場を解っているからこそのあるべき反応だ。
その表情や気持ちを全て受け入れた。
「何を言われても構いません。わたしが決めたことでございます。
命を絶つところから今まで支えてくれた方です。
彼がいなければ今わたしは、己の使命にも力量にも目覚めないまま、こちらにたどり着くこともなく、
もうこの世に存在すらしなかった………。」
「お入りください。そして今のあなたの事も鬼殺隊のことも聞きたいことが山ほどあります。」
落ち着いた様子でありながらどこか憂いを帯びる表情から、杏寿郎はそれ以上なにも言えなかった。
促されるまま離に入っていく二人を巧一は心配して目が離せなかった。