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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第7章 残されていた愛 繋がる愛




桜華たちが細手塚家を訪れてから1ヶ月が経とうとするころ。


梅雨が明けて毎朝けたたましいセミの声で目覚め、新し物好きの家族が見つけてきた扇風機という機械に当たるというのが最近の朝の日課となっていた。



そんな朝を迎えて一通りの日課を済ませ、狛治と指南書を確認していると、一際大きく快活な声が聞こえてきた。


「お尋ね申す!!細手塚殿の屋敷はこちらで間違いないだろうか!!」



その声は確かに屋敷の敷地内の隅々に轟いた。


「だれだ。暑い日に暑苦しい声で叫ぶのは………。」


と厭そうな顔でぶつくさ言っている狛治も狛治で一冊の本を桜華と肩をつけて読んでいる。

一方桜華の方は思い当たる節があるようで肩に力が入った。


(こ……この声量と話し方は………。)


すぐに異変に気づいた狛治は


「鬼狩りか?知り合いか?」


と尋ねた。


「はい。炎柱の御子息かと……」


桜華は幼い頃、父と共に産屋敷邸を訪れた時の出来事を思い出していた。

その時は偶然柱合会議があり、炎柱の横にいた少年と目が合い、駆け寄ってきては屈託ない笑顔で挨拶してきたのが始まりで、

よくわたしを見かけては桜華殿!桜華殿!と突然声をかけられ幾度か驚かされていた。

痣者だと知ってた当時の柱たちは父を気嫌う者も多かったが、その中でも炎柱は何を言っても理解しようともしなかった程だった。

それゆえに声をかけては見つかって引きずられるようにして目の前を去っていくと言う光景がよく思い出された。


今も大きな声で会話している当時少年だった男は
声変わりしたようで男性の声にはなっているものの、快活明瞭な大きな声は今もなお健在のようだ。


なぜ柱である父親が来なかったのか、思い当たる節があるものの、まだ彼は鬼殺隊に入ったのかも怪しい年頃。


色々不可解なことが多かったが、屋敷の主の知らせを待った。



暫くして、朱音が離にやってきた。



「桜華様、狛治様、産屋敷邸側の柱のご子息が訪ねて参りましたがお会いになりますか?」



桜華たちの立場と狛治の置かれている状況と鬼、しかも上弦の刻印が残る状態のまま合わせてもいいのだろうかと不安と気遣いで聞きに来たことはよく解っていた。


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