第7章 残されていた愛 繋がる愛
しとしとと雨が降る中、濡れぬようにと傘を持った巧一が、長男で次期棟梁の巧郎と共に狛治たちが借りている離にやってきた。
桜華が客間まで二人を通し、書斎にいた狛治を連れてきた。両者向かい合わせるように着座する。
「狛治様に刀剣の模型を仕上げて持って参りました。手にとって使い勝手の良いもの、またご要望があればお申し付けください。」
巧一の言葉のあと、巧郎によって広げ置かれた木の模型を狛治は目を輝かせて見ていた。
「造形から美しい……。模型の段階でここまでとは……。
有難うございます。早速失礼します。」
神前に備える武具といっても納得できるほどの美しい造形の模型。
一つ一つを手取り、持ち方を変えたり、拳をつき出してみたりしながら真剣な面持ちで使い勝手や扱いやすさを確認する。
注目したのは
可動式の利便性の良さと峰がない両刃
暫く双方を持ったり動かしたりして何かを思案している。
その真剣な様を他の3人は静かに見守った。
「この二つの素晴らしい特徴である、可動式の利便性の良さと峰がない両刃これらをひとつの鎌にすることは可能ですか?
それと、強度がどれ程変わるのか教えていただきたい。」
「そして、防御のために腕に装着する刀受けの刃は、刃を外し、腕に装着する防具にしていただければ有難い。
俺は腕の側面、背面で攻撃を受けることが多いから。」
巧一の技量に感動している様子はまるで子どもが流れ星を見つけたよう。
戦うことに関しての新しい境地を思い描き、自分の武具を作っていくことの喜びを噛み締めている。
桜華は その様子を微笑ましく見ていた。
「はい。可能でございます。
我が細手塚家が得意としますこの可動式の技術を支えている軸となる部品は、
どんな金属より強度やしなやかさを誇り"世界一折れない金属"と言われているものを使っております。
両刃は峰がない分強度が落ちるところを、独自の焼き方や打ち方で補っているので、強い頸を誇る鬼を力一杯打ち払ってももちろん問題ございません。
防具もそのように試作してみます。
鎌の方はこちらでお望みの型に一度仕上げてみましょう。」
巧一に促された巧郎は、懐から出した工具を繋ぎ目に宛がい工具の上から金槌を軽く打ち付けた。