第7章 残されていた愛 繋がる愛
巧一は、再び戦う二人に、
雄一郎と桜華に最初の刀剣と刀扇を渡した際に踊った舞を思い出し
その姿を重ねた。
その時の二人の父親であった先代当主が感慨深そうな優しい眼差しで見守っていたことを思い出す。
(38代目も安泰です。彼女は代表がお認めになるくらいの素晴らしい当主になられる。
きっと鬼のいない世界、鬼になるものがいなくなる世界に導いてくださる。)
そして、狛治の武術、桜華との闘いを見て、
狛治がただ単に拳を振るうのではなく、桜華の力を引き出しやすいように絶妙に段階を踏んで技を選び、攻撃を繰り出している事に気づく。
桜華が本気で戦えるように言葉を選んで、自らの化け物じみた再生力を持って鬼のように煽り対峙しているのだ。
それは、彼女自身を当主に認めてもらえる程にしたいという気持ちと、彼女の人生に本気で寄り添っていく強い覚悟を見た。
(狛治様は鬼だったということを鑑みて、今の様子を思うと、桜華様は自らの志と信念と優しさで、周りの者を変えていく力があるのかもしれません。
そして彼らを味方につけていく。)
(そんな代表を守っていく狛治様の刀剣、
代表の桜華様を守っていきたいというお心も織り交ぜ、細手塚家始まって以来の最高傑作にしていかなければなりません。)
そう思いながら二人の激しい実践さながらの稽古を眺めていた。
他の一家の職人も、腕組みして真剣に二人の闘いぶりから狛治の刀剣を思案し、大方のイメージが完成していった。
程なく二人が稽古を終えて一家の元に戻って来た。
桜華は疲れた様子で狛治に背負われていたものの、二人とも優しい笑顔を浮かべ、激しい戦闘が終わったばかりと思えないほど和やかだった。
「お見苦しいところをお見せしてごめんなさい。
力を使いすぎてたてなくなってしまいました。」
と第一声に桜華が言うと、先ほどの食卓のように空気が和らいで、皆が笑顔になった。