第7章 残されていた愛 繋がる愛
刀扇で突き技を繰り成す桜華に、ニヤリと笑みを浮かべる。
「桜華、お前はまだ俺に遠慮しているな?もっと本気を出せ!!」
至近距離で互いの顔を突き合わせる。
「俺はまだ桜華に頸を撥ねられるほど弱くはない。だからといって生涯共に生きると決めた女を痛めつける事も俺を殺させるようなこともしない。
遠慮はいらん!
周りに配慮するくらい俺でできる。
俺を信じて、俺に集中しろ!!
全力を出せェ!!」
桜華は無言で両目を見開き、己を奮い立たせた。
突き技を交わされたまま猗窩座の肩を蹴って宙に体を浮かせると下降体制で頭をやや下に向けた状態で二つの刀扇を縦に並べ振り被った。
勢いよく吸い込んだ息を全力で吐きながら一気に下降する。
同時に勢いよく炎が吹き上がり、猗窩座もそれに応えて刀扇を迎え撃つように拳を突き上げ地面を蹴った。
「破壊殺・乱式」
猗窩座の威力が増した拳に対して、全体重をかけた斬り技もまだまだ力が足りず体が吹き飛ばされるも、宙にいる段階で身を翻す。
着地して、また態勢を整え刀扇を構えなおし、地を蹴るように駆け出した。
「そうだ!今の反応速度、身のこなし.....
そうやって俺にかかってこい!!」
日の呼吸を扱う桜華は鬼ほどではないが、持久力と力の出しやすさは違う。
そして、信じてかかってこいと言われたからには、本気でかかることしか許されない。
猗窩座の言葉で全ての枷を外されたかのように軽やかに音を立てず全速力で疾走してくる。
真剣そのものの表情と目力は無惨の記憶の中の男を彷彿させてくるようなもの。
(どういう因果か知らないが、やはり、アイツに似ている)
そして、またもや、自分達を逃がす手助けをした男の姿が脳裏を過った。
(そんなことはどうだっていい。俺こそ桜華に集中しろ。
他の事は後回しだ)
そう思いなおし、自分に向かってきた刀扇を白羽取りで受け止めた。