第7章 残されていた愛 繋がる愛
「師範、そろそろ日の舞に入ります。鬼は太陽が天敵。
いつも攻撃を受けながら戦う師範の戦い方では、些か危険が伴うと思われます。
最小限腕だけで攻撃を交わすようお願いします。」
鬼としてかかれと言われた以上、稽古上の気遣いゆえに狛治とも猗窩座とも呼べなくて師範と呼んでみた。
「心配は無用だ。
だが、俺もいずれ人間に戻るのなら今の戦い方を改めていかねばならんな。
今のお前なら互いに師範とも呼べるだろう。俺も君に習わなければならない事が山ほどある。」
自分の事をある程度は認められていると感じた桜華は頬を緩めた。
「そのお言葉嬉しいです。お役にたてるよう頑張ります。」
そう言って、呼吸と刀扇を構え直す。
桜華の日の呼吸の炎は
神事の松明の炎のような、どこか神々しさを感じるもの。
しかし芯の強さを感じられる決して弱い炎ではない
先ほどの結の舞より高い温度を放つ熱気
呼吸音が聞こえない炎の音と光の中
髪色が褐色に変化し
そこにいるのは扇を構えた舞巫女の様に神々しく映る。
「美しい。無惨の記憶の中で日の呼吸の剣士は男で男らしく凄まじい業火だったが、お前の日の呼吸の本質は芯が強い優しさと言ったところか……
お前らしい。
同じ呼吸でも人によって性質が違うところが面白い。」
そう言える猗窩座ではあるものの、実質桜華に傷ひとつつけてはいない。
避けられる止められる範囲を見極めてやれるほど、まだ余裕は十分にある状態。
技を引き出すように動いていると言った方がいいのかもしれない。
傷を負うのは防衛の概念や恐怖心が薄れた猗窩座のこれまでの戦い方からの習慣と言ったところだろうか。
そしてそれは桜華自身もよく解っている。
「来い!」
その合図に桜華は走りだし、刀扇を振るい剣舞を舞うように攻撃に入る。
刀扇から吹き出る炎の軸は太陽の黒点のように黒くそこから松明を振るうように火の粉を飛ばしながら燃え上がった。