第7章 残されていた愛 繋がる愛
「桜華、やはり君は素晴らしい!
見事な剣舞だ。これは鬼を滅すると言う言葉ではあてはまらない。浄化だ!
もっと反応速度と力をつけろ!もっと深く切り込めるようになれ!
お前はもっと強くなれる」
「有難うございます。精進いたします。」
元々は鬼といるより鬼狩りと死闘をしているときの方が愉しそうで饒舌だった分もあり、桜華に称賛の言葉を沢山投げ掛ける。
そして、心も鬼だった頃と違うのは
自分が最も欲していて到達できていなかった"至高の領域"に到達している者に対して嫌悪感を持たないこと。
学びたい、習得したいと思っていることである。
それもそう、猗窩座の心は既に人間であり
戦う先の目標が明確であるから。
黒死牟、鬼舞辻を討ち果たし鬼のいない世の中にすることだ。
刀と拳の攻防戦。閃光が入り乱れている様子を静に見守る一家は、上弦の鬼の戦闘力と彼に本気を出させる程の桜華の実力をまざまざと見せつけられている。
「棟梁、二人を目で追うことは可能なんですか?光しか我々には見えないのですが………」
朱音の次男充が訪ねた。
「追うことはしていないさ。ただ、大事な踏み込みや居合い、息づかい、姿勢、性格全てを見るのはやはり、戦っている時がいい。
見ると言うよりは感じるに近い。
それが解ったらお前も一人前だ。」
「はい。」
「二人のように高く志を持て。」
「はい。」
充はそう言われて、桜華と狛治、母である朱音、兄、悟を見た。
ここにいるものは職人と戦士という違いはあれどそれぞれで極め高める者が集い、皆の目は先ほどの和やかな雰囲気とは違い、二人をただ単に観戦している様な生易しい目をしていない。
皆が真剣そのものだ。
その先に鬼を滅すると言う目標を見定めているのは同じである。