第7章 残されていた愛 繋がる愛
桜華は突きつけられる拳を交わして、受け流しながら、ある試みを試そうか思案した。
技の名前はまだ全てどころか月の呼吸を数種類覚えた程度。
舞は"型"としてひとつに確立して頭に入ったわけではないが
全集中常中の状態で呼吸を意識し、舞を高速で舞うとどうなるのか。
兄、雄一郎はかつて2度、共舞を舞った。
その前に父と伯母の舞を見て、
その全ての舞の共演から
月と太陽それを結んだ創業者はどういう思いだったのか。
そして、ホンの数十分、指南書と舞でわかったのは
桜華が教えられた舞は
順番が月、結、日であり、日の呼吸で舞う割合が少ないこと。
対して嫡男は代々、日の呼吸の精度の高さを求められ、わたしが日の呼吸の舞で御兄様はその時だけ僅かに月と結を舞う。
この地上では、月も太陽も両方存在しなければ成り立たない。
月よりも太陽が強力であることは言わずともわかること。
しかし、今や、月も太陽の剣技の日神楽家以外に両方存在しない。
"結"はただの"技の繋ぎ"なのか
それとも"地"という岩の呼吸とは別の位置付けなのか
答えはわからない。
きっとこれを解くには実践と新しい情報が必要になる。
それならば実践あるのみと呼吸を整え治す。
何かを察知した猗窩座は次の一手を心待ちにニヤリと笑った。
「桜華。思い立ったことはやってみろ。
闘気が変わったな。次の一手次第で俺も術を出そう。」
「望むところでございます。」
(血の滲む鍛練と稽古を思い出せ。
父がわたしに叩き込んだ呼吸と演舞を極限まで高速で繰り出せ。
彼に本気を出させなければ最高の剣を作る情報が限られてしまう。)
そう自分を奮い立たせ
大晦日の暮れる日の光と共に篝火の炎が弾ける音を記憶から呼び起こす。
目を閉じて深い呼吸の後、ゆっくりと開かれた桜華の瞳は夕日のように真っ赤に染まっていた。