第7章 残されていた愛 繋がる愛
「で、でも……。狛治から血が飛んだら多分正気じゃいられません。」
「ないと誓っているが、それでも万が一俺が再び無惨に支配されるようなことがあったら、無惨にではなく桜華の手で滅してほしい。
それに、今、俺が鬼であることで君に役立てられるのは実践だ。
言っただろう。"俺が支えるから当主であれ"と。」
「わかりました。でも、人間に戻った暁には、木で作った扇でも用意して、ずっと武を高めていきたいです。」
「望むところだ。鬼の間はいつでも君を知らない猗窩座だと思ってかかってこい。慣れたら俺も本気を出すぞ。」
その一連のやり取りを見守っていた巧一は、桜華と前代表である彼女の父の姿を重ねていていた。
「巧一様、稽古が出きるところへ案内をお願いします。」
「はい。私どももお二人の戦う姿、楽しみでございます。
極上の刀剣にすべく、その闘術、拝見させていただきます。」
両者恭しく手をついて頭を下げた。
部屋を出ると細手塚一家が表で待っており、皆で広場に向かって歩みだした。
彼らの腰にも日輪刀。夜の備えは鬼狩りの刀を打つ者としても義務である。
その姿は昼間の職人の姿ではなく桜華が子供の頃より見ていた勇ましい鬼狩り様そのもののように映った。
(彼らを再び支えられるようになねばいけません。そのためにももっと当主らしくしっかりせねばなりませんね)
そう気合いが入る手には日輪の刀扇。
案内された場所につけば桜華と狛治は対極に離れ一礼をして構えに入った。
刀扇を構える桜華の姿勢は舞曲がなる前の刀扇を閉じた方を対象に突きつけ、開いた刀扇で口許を隠し目の前の相手を流し目する。
狛治は最初は血鬼術を用いない。
素流の構えで左の拳は腰辺りで引かれ、掌が桜華に標準を合わせるように向けられている。
二人が放つ威圧感だけでも周りの空気を張りつめたものに変えた。