第7章 残されていた愛 繋がる愛
気付いた時には月の位置から亥の刻を過ぎている。
「あら、もうこんな時間なのですね。
解りました。まだ滞在させていただく期間が沢山ありそうなので、またいろいろ教えてください。
しかし、巧一様は沢山、父から言伝や預かりものをされてきたのですね....。その期間大切に守り抜いてくださって有難うございます。」
「いえいえ。我が一家が先祖代々成り立ってきたのは日神楽様あっての事でしたから。
少しでも恩を返せて満足しているところでございます。」
「有難うございます。」
刀がどのような代物になるのかによって、最初の刀を作るのに最短1ヶ月、その間に少しもゆっくりしていい時間などない。
時間は有限で、いくらあっても足りないのだ。
舞に組み込まれていたとしても、呼吸それぞれの型を武術として覚え直さなければならない。
指南書から呼吸のそれぞれの型を洗い出して
日の呼吸は12、
月の呼吸は7
結の呼吸は5
といったところ。
道具が手元に近く最大二つの刀扇を体の延長として使う。
その分剣術より体術が重要らしく、狛治に教えて貰っていた武術が役に立ちそうだった。
「少しは今でも使えそうです。」
「ならば、それで俺にかかってこい。」
独り言のつもりが思い切り狛治にも聞こえていたようで桜華は驚いた。
「え?!でも、これらの呼吸は力がすごく強いのでしょ?
しかもこれは真剣です。
狛治を傷つけてしまいます。」
「俺はまだ鬼だ。毎日桜華に見られぬように再生速度の変化を試しているが、全く変わっていない。
頚さえ斬られなければ戦う速度に影響が出ないくらいに再生できる。」
頭の中では理解できたとしても、添い遂げる約束までした人に対して刀を突きつけることすら難しいのに、それを本気で、鬼を滅するそれで立ち向かうことなどできるわけがない。
桜華はそれをやれと言われたことで顔を青くし、手が震えた。
「案ずるな。俺は戦うのが好きだ。数えきれないくらい鬼狩りに斬られた身だ。
それでも何事もなく生きてきた。
俺は恐怖よりも、桜華が鍛え上げた舞が武術として見れるのが楽しみで楽しみで仕方ないほどだ。
俺も剣を握ることになる。共に高め合えるのだぞ。」
心配を払拭させるかのように狛治は鬼の顔で笑って見せた。