第7章 残されていた愛 繋がる愛
狛冶はその呼吸の名を聞くと驚いた様子で巧一を見た。
「どちらも見たことがあるかもしれない。
一つは無惨の記憶から、
もう一つは黒死牟が月の呼吸だ。
しかし、黒死牟のものは血鬼術にどれだけ影響されているのかはかり知れん。
結の呼吸は今までに噂も他の鬼からも聞いたことがない。
ただ、間違いなくあまり類を見ない呼吸で威力があるのは確かだ。恐らくその二つから生まれた呼吸もそうだろう。
それがそのまま舞に食い込むことが出来たのか.....」
狛冶は、隣にいる桜華が、その舞を幼いころからこの華奢な体に叩き込んできたのだと思うと今までの鍛錬での桜華の習得の速さに合点がいった。
「狛冶様がこれまで様々な剣技と遭遇していらっしゃること自体が、心強うございます。
今このお話を聞いて、それを意識したとして、それがどれくらい武術として応用が利くかどうかはわかりません。
が、ここは修行が出来そうな場所が近くにあります。
お命を狙われる身であるお二人は、こちらでの滞在期間中を利用して鍛錬していただきたいのです。」
「何から何までご配慮いただき有難うございます。本日より、舞から武術を意識して使ってみとうございます。」
桜華は強い決意でそう言った。
巧一はさらに続ける
「そして、刀が出来上がりましたら、是非ともお二人には”あの方”に会っていただきたい。
鬼舞辻 無惨討伐を志すという目的で前代表と共に様々な研究をしておられる鬼医者、珠世という女性に。
その方のところに、日神楽家の日神楽財閥の全てが解る書物が存在します。
因みにここの敷地は前代表の口添えでその珠世様の助手の血気術で隠していただいています。
人間には見えますが鬼には見えぬようです。狛冶様は恐らく桜華様の血によって見ることが出来たのでしょう。」
桜華と狛冶は驚き目を見合わせた。
そして、
「正に、こちらに伺った後向かおうとしておりました。狛冶の血の呪いと、わたしの体質を見てもらうためです。
巧一様は珠世さんの居場所をご存知なのですか?」
「もちろんでございます。お守り戴いていることもあり年に何度かお会いする事がございます。
おっと、もう夜遅くなってしまいました。
その件はまた少しずつお話しましょう。」