第7章 残されていた愛 繋がる愛
「前代表は桜華様がお生まれになって、なぜか嫡男で在らされます雄一郎様を差し置いて”桜華様の代で”鬼がいない世界になる”と仰せでした。真意は語っていただけなかったので悪しからず。
ですから、この刀扇は武器に、そして日神楽舞踊を剣技してお使いくださいとのことです。」
「なぜその剣技を隠さねばならなかったのでしょう?
突然、舞は剣技の元であったと言われても納得がいかないのです。」
桜華は尋ねた。
創業者の代から、舞踊として受け継いだ日神楽舞踊。
それは、誰もが舞えるものではない事は、幼いころより鍛錬してきた故によく理解している。
しかし、それを鬼とはいえ、剣技として鬼を滅することに使えと言われて戸惑わないわけがない。
「桜華、それについては心当たりがある。」
狛治は静かにそう言った。
「俺が鬼になるもっと前の頃の無惨の記憶だ。黒死牟と共に"あるひとつの呼吸の剣士"を根絶やしすることに明け暮れていた時期がある。
その呼吸を酷く恐れて決行したようで、時々はそれを思い出しては酷く怯えていたようだ。
燃えるような炎より強い熱を感じるものだった。」
「流石は元上弦の参におられた方ですね。
はい。
正にその呼吸の剣士を全滅させようとしていた時期があったと聞かされています。
その少し前の時期にこの日神楽舞踊が完成しており、現在に至るまでの継承の規則や基盤が出来上がったと聞きました。」
「よく理解ができました。」
桜華は大きく頷いた。
「因みに呼吸の名前は.....」
狛治は上弦として古くから存在していた分沢山の呼吸の柱と戦った経験や鬼舞辻から得た情報で参考になるものがないかと思い聞いた。
「詳しくは書物の第一章にありますが
3つございます。
一つは『日の呼吸』
二つは『月の呼吸』
そして三つめが”月、太陽、地球の一連の結びで起きる月食、日食という現象”から名付けられた『結の呼吸』
この結の呼吸は創業者独自の呼吸だとお聞きしました。
因みに、創業者は女性で、
剣技を習得し独自のものを完成したのは
今の桜華様の年齢の頃だそうです。」