第7章 残されていた愛 繋がる愛
その後の食卓は、桜華と狛冶の立ち合い稽古が控えているためそこまで豪勢ではないものの歓迎会の様に賑やかだった。
ある程度食事が済んだところで、巧一が桜華と狛冶を呼んだ。
用があるのは桜華の方だけの様だが、実質桜華の師範のような立場である狛冶にも聞いて欲しいとのこと。
「先代代表から、もし自分が死んだときに言伝て欲しいと言われ、おそらく今が言うべき時と思いお二人をお呼び立てしました。
日神楽家で舞う舞は、創業者の代に”ある目的”を持って鬼を狩るための技を組み込み隠したものだとお聞きしました。
本来ならば代表家族が成人されるまでの秘密とされていましたが、先見の目があられた代表は何かを感じ取られたのでしょう。私以外知ることがないようにと託されました。」
「本来ならば雄一郎様と桜華様で対になるように型を作っておられたのですが、雄一郎様はお亡くなりになりました。
本来ならば雄一郎様が受け継がれた型こそ、本流。そしてその本流を支える型を創業者が創案されました。
ここにそれを記した創業者とその師範が400年前に考案し書き残した指南書がございます。
桜華様の刀扇が黒い刀身に銀の先端だった場合、渡して欲しいと仰せつかっておりました。」
そういって、二人の前に古びた紙の冊子が置かれた。
旧字体で草書。半分が読めそうにないと思った桜華だったが、狛冶が
「今ではあまり使わない字体ですね。俺なら読めるので、俺が彼女に伝えます。」
といった。
考えてもみれば狛治は鬼になってから人の寿命の倍以上も生きている。
読めても不思議ではない。
「あの男の指示でいろいろな書物を読んでた」
桜華が読めることに感心しているように思ってそう言ったようだ。
鬼もいろいろな任務があるらしい。
さらに巧一が話を続ける。