第7章 残されていた愛 繋がる愛
結果は言わずもがな一瞬で終わってしまったのだが、見ている女達はため息を漏らすほどの美しい身のこなし。
加減は十分にしており、痛みがそんなにないのか次々立ち上がっては狛冶に向かっていくのだけど、無駄のない身のこなしと、バタバタと倒していく様が、人間時代の狛冶を想像するに十分なもの。
見慣れた桜華にとっては、
まだ結婚こそしてはいないが、自分の想い人が家族親戚に認められているような暖かさと
自分の事を家族のように思ってもらっていることが堪らなく嬉しかった。
いろんな暖かい思いが血液の様に体中を駆け巡り、感慨深く見ていると、
桜華の肩や背中には自然と一緒に食事を作っていた女たちの手が置かれ、温かいまなざしを向けていた。
「今までよく頑張ってこられましたね。立場も住む世界も全く違いますが、私達は桜華様と狛冶様の一番の味方です。」
朱音のその言葉と気持ちが身に染みて目頭が熱くなった。
「有難うございます。」
一方男たちは、ぜえぜえと息を上げ始め、立ち上がれなくなってきた。
「狛冶君、よくわかった!!やっぱり君が桜華様をお支えすべきだ!!」
女衆から、いや、もはや当事者同士でなければ全く理解不能だが、満足したらしい。
汗一つかかず涼しい顔をしている狛冶だが、彼も彼でその言葉と皆の想いが嬉しいようで目が充血しているようだった。
「鬼である俺を受け入れてくださってここまで暖かくしていただいて....感謝しきれません。
想いを無駄にしないように大事にします。」
そういって深々と頭を下げた。
何事もなく人間になれる保証がないは誰だってよく分かってる。
結果は後でいい。
ただ結果を得られるまでも、決意が変わらない事、狛冶の意志と決意の堅さ
それが分かれば充分だ。一家はそう思っていた。