第7章 残されていた愛 繋がる愛
「今日はいろいろありすぎた。」
「そうですね。」
「鬼の世界のままでは、こんなに胸がいっぱいになる日は来なかったと思う。」
風呂を済ませて寝間着のまま
縁側に出て眺める月は満月。
桜華は狛治の肩に寄りかかり
戴いたばかりの刀扇を
白銀の月に照らし合わせるようにしてかざし
二人でそれを眺めていた。
「今日、巧一様にあのように仰ってくださって有難うございます。
生半可な気持ちではないことは解っていましたけど、実際に言葉にされると、狛治の覚悟が改めて思い知らされて嬉しかった。」
掲げた刀扇を下ろして鞘に納めると
静かに笑みを浮かべて狛治を見た。
「桜華とずっと一緒に生きると決めた時に全て決めてきた。
俺が人間に戻れたとしても、そこで終わりにしたくない。
罪を重ねすぎた俺が人間になって生きていくのに、
鬼がいる世界で平穏でいることは許されるべきじゃない。
人の命を奪った分、与えられた力で出きることがしたいんだ。」
「狛治がそう言ってくださったからには、わたしは何が起きても逃げることはせず受け入れていきます。
前に本拠地へ戻るつもりがないと言いましたが、
今日のお話を聞く限り、耀哉様はわたしに気づいたら引き入れて共に闘うことを願われるでしょう。そのときは必ず狛治と共にと仰るはずです。
そこに良く思わない隊士も多いでしょうが、信念を貫き実績を出せばついてきてくれる人は増えていきます。
今より助け合って突き進んでいきたいです。
必ず守ります。」
桜華は、当主としても女としても、あのように自分の運命を共に背負ってくれると言ってくれたからには守り抜きたいと思った。
むしろ、狛治の言葉でその運命、宿命に立ち向かっていく決意が出来た。
狛治にとっては、既に人間の寿命の倍以上を生きて、もはやどこに行っても己の身一つ。
だからこそ、鬼として生きることを捨てたとき、桜華に降りかかるもの全てを一緒に背負っていく覚悟で桜華のもとに帰ってきていた。
迷いなく巧一に、日神楽の名を背負うつもりだと返事できたのもそういった覚悟からの返事だった。