第7章 残されていた愛 繋がる愛
巧一は先ほどの事を朱音に説明すると
「まぁ、お名前を.....。それはめでたい事でございました。
わたしも狛冶さんと呼ばせてくださいね。」
と、言い、狛冶は礼を述べた。
そして、朱音が三宝の上に桜柄の紫の布に包まれたものを差し出し、目の前でそれを広げて見せた。
鋭い鋼色の、鋭利に尖った短い刃を幾重にも重ねた扇には刀の一本一本に太陽の模様が入っている。
そしてもうひとつは月の模様。
「純度が高いため、こちらは色変わりの刀になります。
早速、手に取っていただきたいです。
因みに歴代代表の刀は見事な黒で。先代は赫刀となりました。
わたしの代で生まれていい刀ではないと、仰っていたのですが.....。」
「そうですか。
でも、父がわたしに何かを感じていらっしゃるようでしたら、どのような刀になろうとも無意味になる事はないでしょう。
失礼させていただいてよろしいでしょうか?」
「はい。」
皆の注目が集まる中、三十八代目となる日神楽家の当主として桜華はその刀扇を手に取り、広げて見せた。
じわりじわりと刀の色が変わる。
「黒....見事な黒刀でございますね。しかし、その切っ先がまるで月のように銀に輝いています。
凄く美しい。どういう意味でしょう。」
「良く解らないけど、そう悪い意味ではないように思います。とても懐かしい感じがします。」
「あぁ。桜華らしい。素晴らしい刀扇だ。」
そういって4人で眺めていた。
「明日の夜、狛治様の戦い方を見て刀の形状を決めたいのですが、お二人で稽古のように戦っていただくことは出来ますか?」
「はい。場所をご指定いただければそこでお願いします。」
その後、刀が出来上がるまでの期間を離れで住まわせていただくこととなり、案内された。
陽光に当たれない狛治のために、
部屋の一室の窓を全部塞いでくれた巧一が母屋に帰ったのは日付が変わったあとのこと。
「生活が真逆だと思うので、日中はゆっくりしていってください」
と笑顔で帰っていった。