第4章 ■イエスマンしてろってか■
ゾンビマンは私にひとつ、クッションを持たせて携帯を取り出して写真を撮る。一体何をしたいのか。
写真を撮り終えた後はベッド中央で胡座をかいて座り、隣を指すので私も胡座をかいて座る。クッションを抱いて。
「このクッション……、YesNo枕と言ってな、男女がベッドにて今日はヤッていいか、やめて欲しいかの意志を伝えるものだ」
『…は?』
そんな事知らない、今初めて知った。だって私はその枕を譲って貰っただけなのに。
意味を知って動揺する私に、ニヤリと笑うゾンビマンは、私のクッションをピンク色で大きなハート柄にYesと書かれた面を上にしてベッドに戻す。
それは困る、と体を傾けひっくり返してやろうとしたのに体を傾けた瞬間には私に覆い被されてしまった。
枕という単語に相応しく、私は今……ピンク色の"性交を許可する側"に後頭部を付けていた。
『流石に、ここじゃ……っ』
「そんなに恥ずかしいなら、声を出さないようにするんだな。今の俺は、枕をYesにした恋人…を我慢出来そうもない。喘ぎ声はお前で何とかしろ」
『そんなの、私がさっき、』
──水色のNoにしようとしたのに。
声を出す為の唇は塞がれて文句も言えやしない。
キスから解放されて、ベッドの上で剥かれていく服。ブラジャーが外された瞬間から、揉みながら乳首に吸い付き、もう片手が自身の下半身に差し掛かる。私は全裸でゾンビマンはズボンとパンツをずらしている(コートは脱いでるけど)
黒いタンクトップに染み付いた煙草の香りがドキドキとさせる。私の下半身は拒むことなく、いつもの彼を許可していた。枕に書かれた文字のように。
私は無言で、サイタマのいる部屋を睨みつける。
私は昨日の時点で拒否権が無かったのだ。
チュッ、と音をたてて胸に吸い付くのを中断し(手はこねくり回してるけど)サイドテーブルの引き出しから出かける時の予備にと買っていたコンドームを取り出すゾンビマン。
『せめてお風呂場に行かせてよ…』
猛るご自慢のイチモツに避妊具を片手で巻き付けながらゾンビマンは悪戯小僧の様に笑い、ひとつの枕を掴んで、その水色を私に見せつける。
──"No(嫌だね)"と。