第3章 ■その手に触れたいという欲■
「……俺が何か、雷神の力流し込まれるような事したか?」
どうやら、お仕置きでもされると思ったみたいで。
首を横に振れば、口元に手をやり、肺いっぱいに吸い込んだ後に煙草を処理した。
煙たい吐息を受けながら、スッ…と出される手。お仕置きじゃないんだけどな、とその手に私の手を重ねた。
『…ありがと、』
手のひらはほんのり熱があるけど、指などは冷たい。私よりも大きな手。男性らしい、ゴツゴツとしていて逞しかった。
もう片手をゾンビマンの手のひらを挟むように下から重ねる。
───懐かしいな、私を外へと連れ出してくれた手だ。
あの頃はとても大きな手に感じたのが、今では少し大きな手という具合。9歳から19歳になれば、成長するもんだけど。
その手をもっと感じたい。
胸の高さ程度のやり取りを、私の頬に触れさせる。自分でやってきながらもドキドキした。
その手を触れさせていたのに、ゾンビマンの意思で私の頬をすりすりと撫でていく。
目の前の男は少しばかり困った目元で、口元には笑みが浮かんでいる。
「なんだよ、こうして欲しいなら始めから言ってくれ。いくらでも撫でてやるぞ?」
『……ん』
ドキドキするけど、嬉しくて気持ち良い。
ゾンビマンは撫でるのをやめて、私を優しく抱きしめる。視界の夕焼けは、目の前の男によって遮られた。
「、次は何をして欲しい?」
『部屋に帰るまで、手を離さないで欲しいな』
「……ああ、お易い御用だ。あの時みたいにもう、離したりはしないからな」
アスファルトに延びるふたつの影。
それは仲良く繋がれていた。